北風の吹くままに 2

私にとって、酒場へ行くというのは旅に出るようなものだ。

ちょいと軽く一杯。
そんなつもりで飲み始めた筈が、もう一杯、もう一軒、さらに次……なんて感じで気付けば朝。こんなのはよくある話。
そのまま数日間家に帰らなかったという事も、私にとっては珍しくない。
その日その時にしか噛み合う事のない運命の歯車というものがあり、それが回り出す瞬間に私はよく出くわす。そして、その流れに翻弄されてしまう事もよくある。
この日にしたってそもそもは、友達に誘われて近場の飲み屋へ行ったというだけの、ありふれた土曜の夜の筈だった。

………… 

この夜の私ときたら、ビール・焼酎・ウイスキー・アドヴォカート・アブサン等々、所謂チャンポンというやつですね、普段はあまりそういう飲み方はしないのだけれど、所謂ゴキゲンというやつですね、ついつい飲み過ぎてしまって、私はとろっとろに酔ってしまったのであった。所謂泥酔というやつですね。
で、土曜の夜ってか既に日付が変わって日曜の午前3時頃、所謂宴もたけなわというやつですね、そろそろ閉店かしらっちゅう頃合いになって突然、意外な形で運命の歯車が噛み合った。

ちょうどこの日に、厚真という土地にあるキャンプ場でイベントがあるという事、そしてiMaginationsがそのイベントに参加するという事を、私は義樹からのメールで知らされていた。
ちなみにそのメールには「来れたらおいで」と控えめに誘う言葉も添えられていたのだが、私は厚真という地名には馴染みがなく、正直どこにあるのかも知らない。当然行き方もわからない。それを調べるほどの熱意もない。(ごめんなさい)という訳で、行くか否かと考える事もなく、そのイベントの存在を忘れかけていたのだった。(ホントごめんなさい)
ところがなんたる偶然であろうか、この日訪れた飲み屋の店主が、そのイベントに行く予定だったのだ。
ちなみに、この店主と義樹は知り合いではない。

「いやぁ、偶然だねぇ、世の中せまいねぇ、いやいやゆかいゆかい」
という感じでその場は盛り上がったのだが、しかし私は
「じゃあこのままみんなで一緒に行こうよ」などとは言わなかった。(筈だ)
飲み過ぎていろんな事がどうでもよくなっていた私は、もうすっかり泥のように酔っていたのであるからして、正直もう家に帰って泥のように眠ってしまいたかったのである。
しかし、イベントの話を聞いてテンションを上げた仲間達はすっかり乗り気で、意気揚々と車に乗り込んでいくのだった。
その勢いに飲み込まれた私は、なしくずし的に、なだれ式に、友人のワゴンの後部座席に流し込まれ、そのまま泥のように眠ってしまったのであった。
午前4時頃、私(泥)を乗せた車が走り出した。

私にとって、酒場へ行くというのは旅に出るようなものだ。

~つづく~ かも知れない。

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