レビュー : Line 6 Relay G50

  • 2012-01-31 (火)

Line 6のギター/ベース用ワイヤレス・システム “Relay G50”をレビューします。

Relay G50 Set

このワイヤレス・システムは、トランスミッター(送信機)とレシーバー(受信機)のセットです。
トランスミッターから順に紹介していきましょう。

トランスミッター

Transmitter

ギターのアウトプット・ジャックから専用ケーブルでトランスミッターに繋ぎます。
この専用ケーブルは、トランスミッターに接続するコネクター部分が独特の形状になっています。

Connecter

トランスミッターの電源は単3乾電池2本です。アルカリ電池が推奨となっています。
ボタンを押してスライドさせるとフタが開き、電池の交換が簡単に出来るようになっています。
フタにある電池の接触部に、電池の方向を示すプラスとマイナスが書いてあるのですが、ステージ上などの暗い場所では判別しづらいかも知れません。

Battery

電源のOn/Offは上部のスライド式スイッチで行います。
On/Off時にスイッチング・ノイズは出ませんので、ギター・アンプの音量が上がっている状態でも安心して操作出来ます。
電源スイッチの隣にはミュート用ボタンがあります。このミュート機能が実は結構便利です。
後述のレシーバーには、メイン・アウトとは別にチューナー・アウトが装備されています。
ミュート・ボタンを押すとメイン・アウトの出力のみがミュートされ、チューナー・アウトからは常時出力される仕様になっています。
チューニング時に手元でミュートを行うのは新鮮な感覚でしたが、予想外に便利だと感じました。
特に、チューナー・アウト付きの機材が他に無い場合には役立つ機能ですね。

Button

2つのLEDはオーディオ信号バッテリー残量を示します。
オーディオ信号のLEDは音に反応して光る仕様になっています。
バッテリーLEDは電池の残量が多ければ青色、少なくなると赤色に点灯し、残量がわずかになると点滅します。
ライブ中などに残量がわずかになってしまった場合には、VALUESELECTボタンを使って省電力モードに切り替える事でバッテリー切れを回避する事が可能です。
VALUEとSELECTボタンを同時に長押しする事でロック・モードになります。誤って電源を切ってしまったりミュートさせてしまったりという事が予防出来ます。
LCD画面には主にチャンネル番号と電池の残り時間が、そしてミュート・省電力モード・ロック等の状態が表示されます。

Backlight

裏側にはクリップが付いており、ベルトやパンツのバック・ポケット、ギター・ストラップ等に挟めるようになっています。
僕は厚さ約5mmの厚手ストラップを使っていますが、問題なく取り付け出来ました。

Back

レシーバー

Receiver

ワイヤレスのレシーバーというと薄くて平べったい形のものが多いようですが、これはペダル・エフェクターを思わせる形になっています。
サイズはBOSSのコンパクト・タイプより少し大きいくらいです。エフェクター・ボードに組み込みやすいサイズですね。

Size

電池は使えず、DCアダプターでの駆動です。電源プラグは一般的なセンターマイナス。必要な電力は300mAで、エフェクター用パワー・サプライからの電源供給も問題ありません。
アンテナは可動式で、取り外しも簡単です。
出力端子はメイン・アウトと先述のチューナー・アウトの2つ。

Output

2つあるノブのうち、下の方はチャンネル設定用です。チャンネル数は12ですので、1つの環境で最大12台の同時使用が出来るという事になります。
そして上のノブはこのワイヤレス・システムならではの機能「ケーブル・トーン」です。
ギターのケーブルの長さは音質に影響します。長くなるにつれて音質の変化は大きくなります。
「ケーブル・トーン」はこの音質変化をシミュレートした機能で、左側に回しきるとオフ、右側に回していく事で仮想的にケーブルの長さを調整出来ます。
具体的には高域が落ち着いていく感じで、アンプのプレゼンスが逆回りになったようなイメージです。

Knobs

Relayを使うと、ギターから30 cm程度のケーブルで接続していることになり(その先はバーチャルなケーブルなので音質劣化もありません)、従来の長いケーブルによって変化したサウンドと比較すると、ずっとハイが強いシグナルを送っていることになります。これにより、システム内のノイズやヒスがより明瞭になったと感じられることがあります。高音質ならではの現象だと言えますが、こうしたサウンドの違いは、ケーブルによる音質変化をシミュレートするCABLE TONE機能により補正できます。なお、アコースティック・ギターなどを使っている場合には、CABLE TONE機能をオフにすることで、これまで耳にしたことのないようなフレッシュなサウンドが得られます。

引用元:Relayギター・ワイヤレスの魅力を探る: 理想的な “バーチャル” ケーブル

中央にはオーディオ信号の受信状態トランスミッターのバッテリー残量を示す、2段のLEDがあります。
受信状態とバッテリー残量を足元で確認出来るのは便利ですね。

音質

僕は1995年からプロ・ギタリストとして様々な環境で演奏してきましたが、これまで基本的にワイヤレスは使ってきませんでした。
かなり大きいステージで演奏する際にも、15Mを超える長いケーブルで対応していた事があります。
演奏しながらステージ上を横切る時には、ケーブルをムチのようにさばきながら移動していました。

ワイヤレスを使わなかった理由は「音質の極端な変化」が気に入らなかったからです。
以前にアナログ式のワイヤレス・システムを数種類試した事がありますが、どれもケーブルと比べて極端に音質が劣化してしまいました。
ワイヤレスを使うならアンプやエフェクターのセッティングも変えなければならない、というくらいの変化です。
聴感上にも勿論問題があるのですが、特にステージ上では体感的に違和感が生じてしまい、「これは使えない」と感じたものです。

Relay G50デジタル式のワイヤレスで音の劣化が少ない、という情報を知って興味本位で試してみる事にしました。
現在愛用中のPODVariaxを創り上げたLine 6というブランドへの信頼感もあって、久々にワイヤレス・システムを使ってみたのです。

まずはそのノイズの少なさに驚きました。
指先の繊細なタッチを鮮明に鳴らすには、ノイズが少ない事がとても重要だと僕は常々思っています。
Relay G50はその点を楽々クリアしました。

音質を極端に変えてしまう事もありません。
厳密にはかなり低い帯域とかなり高い帯域が少し弱くなるようですが、劣化とは感じないくらいのクオリティです。
ヘッドホンでチェックしても違和感がありませんでしたし、大音量で鳴らした際の体感的にもケーブルを繋いだ時と変わりませんでした。

先日行った約2時間半のライブで実験的に前半でケーブル・後半でワイヤレスと使い分け、他の機材セッティングは全く変えずに演奏してみましたが、
全く違和感無く全ステージを心地良く演奏する事が出来ました。

ワイヤレスのメリット

ワイヤレス・システムを使うメリットは、なんといってもケーブルのわずらわしさから開放される事です。
たった1本の細いケーブルが無くなるだけですが、それだけでかなり心身的に身軽な感じになります。
例えば、携帯電話に充電ケーブルを繋いだまま操作すると身体の動きが制限されますよね?
ケーブルを外した途端に制限がなくなる感じ、といえばわかってもらえるでしょうか。

ギターの場合は基本的に「ケーブルが繋がっていて当たり前」です。
しかしワイヤレスにした途端に、上記の携帯電話の例と同じような感覚になります。
ワイヤレスの便利さは、体験して初めて明らかになるものだと思います。
ギターとエフェクター・ボードがケーブルで繋がれていない状態というのは、予想以上にすっきりとするものです。

ギターとボード間のケーブルに足がひっかかる、というのは起こりがちなトラブルです。
ボーカリストがステージ上を歩きまわっている際にギタリストのケーブルにつまづいて転んでしまい、つまづいた拍子にケーブルが抜けて音が出なくなってしまう、
という場面をアマチュア時代に数回目撃しましたが、そのようなトラブルはワイヤレスにする事で当然防げますね。
余談ですが、上記のトラブル現場を目撃してから、ギターのケーブルは必ずストラップに引っかけてから繋ぐようになりました。
これで、誰かがつまづいた時でもシールドが抜けにくくなります。

変則的な使い方として、エフェクターの後にワイヤレス・システムを繋ぐ方法もあります。
Line 6のブログに紹介されていたものですが、この発想には目からウロコが落ちました。
この方法だとエフェクター・ボードとアンプの間にケーブルが無い状態になって、ステージ上がすっきりしますね。
ボードとアンプが離れていたり、その途中に他のメンバーの機材などの障害物があったりする場合に有効だと思います。

ギターとボードの間/ボードとアンプの間それぞれにRelay G50を繋げば、ギター/ボード/アンプをワイヤレスにしてしまう事も可能ですね。
実際にやる人がいるかどうかは謎ですが、かなりスマートなシステムが出来そうです。

Wireless-Pedal-Board

先日行ったライブでは、アンコールで2階席から登場、階段を降りて客席の間を通ってそのままステージに戻るという演出をして、非常に盛り上がりました。
ワイヤレス・システムがあったからこそ思いついた演出ですね。
一番遠い場所でステージから約20M離れた所で演奏しましたが、音切れなどの問題は全くありませんでした。


今回紹介したRelay G50の他にも、上位機種Relay G90・下位機種Relay G30ラインナップされています。
ステージで動きまわりたい人、機材周りをすっきりさせたい人にお薦めのアイテムです。
是非ワイヤレスの便利さとその高音質を体感してみてください。

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