青木裕ロングインタビュー:シグネチャーモデル”Camuro Naked Machine”を語る

  • 2014-05-29 (木)

Yutaka Aoki playing with Naked Machine

着地点を見据える大事さ

青木:この噛み付き感と滑らか感は…目指した所だよね。

Jake:いやもう実に…贅沢。

青木:欲しい…よね。(笑)

Jake:うん(笑)、買えるものなら欲しいと思います! まあ流石に数が少ないだけの理由がわかりました。

青木:ほんと試行錯誤の上でだから。とにかくパーツが…日本じゃもう手に入らないという所までやってたんじゃないかな? 個体差を無くす為。代用品ナシ。で、この数(10個)。限定って事で。

Jake:これ、構想はいつくらいから?

青木:2013年の夏くらいからだから…1年近くかかったのかな。まずプロトタイプを作って…今自分が使ってるものだけど。(市販品と比べても)差が無いし…それはエンジニアさんの腕の素晴らしさって事で。ちゃんと…Skypeとかで意思を疎通し合って、かなり…細かく。

Jake:これODとDS単体に分けて出しても価値があるくらいのものじゃないかなー。贅沢です。


Jake:ネーミングはどこから?

青木:これはunkieの曲名から。ほんと素の…基となる…裸の音、みたいな意味もかかってるけど。
…なんでも良かったの(笑)。「ゆたかスペシャル」なんて言われると困るんで(笑)。

Jake:それはそれで良いと思うんですけど。

青木:えー。(イメージが)離れちゃうよ(笑)。この価値を知って欲しいからね…、なるべく伏せたいんだよね、自分が関わってる事を。

Jake:いやでも、結果としてこれだけプレミアムなものだからね。

青木:想像以上というか…想像通りなんだけど、まさかこうして具現化するとは。

Jake:それにしても、欲しいもののポイントが定まってるからこそ落ち着いたという感じはあるよね。もっと普通は試行錯誤するんじゃないかっていう。

青木:あー、たしかに答えは見えてたね。

Jake:ほら、ちょっと欲張ってみたりとかね。

青木:それは結局ね…迷宮に踏み込む事になる。その、1%の欲が…。「これが出来るならあれも」っていうとおかしな事になるんだよな。

Jake:それは皆そうなりがちだから、潔いなと思ってね。

青木:そうそう、だから…着地点を見据えるって凄い大事じゃん、作品作りも。このエフェクター作るにしてもそれは凄い意識したから。


Jake:どうですか、自分のモデルが納得のいく形で出来た気分は?

青木:最高じゃないですか。

Jake:最高だよね(笑)。

青木:いやーだから、これも実は…歪みをひとつ作るだけが目標ではないので。

Jake:次の計画があると?

青木:もちろん。(ここで再びギターを弾き出す)

Jake:いやー、ギターとアンプだけで既に良い音しちゃってますけどね(笑)。やっぱり本人のセッティングが一番落ち着きますね。

– そのまま5分ほど独奏。

Jake:お見事。

ヴィンテージRATとの比較

– ここで、私の持参したRAT1(1986年製ブラック・フェイス。今回モデルとなった青木氏所有のRATと同年代のもの)を弾いてもらった。

Proco RAT (1986 Black Face)

青木:これ良いねえ。

Jake:どうですか、この個体は?

青木:もう一緒。僕の知ってるRAT1の音です。やっぱりゲインが9時くらいが一番良いね。アタリのアンプの音してない?
これは’85〜86年のMotorolaの…もう(僕の持ってるものと)一緒の音。
だから…Naked Machineはパーツがもう無いんだけど、これ(RAT1)をバラして使って良いんだったら作れるよ。そういうやり方もある。

– さらに、RAT1Naked Machineと弾き比べてもらった。

青木:似てるもんね、もう質が。

Jake:古い方(RAT1)がやっぱり荒削りな感じがするね。

青木:こっち(Naked Machine)はね、少し太くしてあるの。ほんのちょっと。

Jake:なんか丁寧だよね、音が。ちゃんと作られてる感じがする。

青木:これはプロトタイプ作った時に、ドンズバとほんのちょっと太いのと、全部並べた中のひとつなの。
これでいきましょうってなったのは、この太さが…噛み合うんだよね。(ODとDSを)一緒に踏んだ時に。

Jake:凄いわかりやすいね、こう比べると。

青木:でもキャラはもう完全にRATでしょ? そこが良いよね。だから(ヴィンテージの)個体と比べると、こっちの方が大体太い。
やっぱりこの音は良いと思っちゃうんだよね。いつもここに戻っちゃうの。

Jake:やっぱり使い慣れた人だから、RAT1のハマリが良いよね。自分で使ってても、ここまではハマらなかったんだよね。

青木:あ、そうなんだ。

Jake:良いものだとは思ってて、メインでは使わなくても手元に置いてあったんだけど。やっぱり良いね。

青木:これ(Naked Machine)はちょっと現代的な…ほんのちょっとモダンにしてあるから、これだったら…メインに成り得るんじゃないでしょうか(笑)。使って欲しいくらいだよ。
ほら欲しくなったでしょ(笑)。ちゃんと自分のチューニングになってます。もう、メロメロになって欲しい、全世界のギタリストに(笑)。ほんとにもう、答えだと思ってるからね。

Jake:ヴィンテージのRATと比べて凄くわかりやすかった。出来ればTSも並べたいくらい(笑)。

青木:並べたいよね(笑)。TSも数年の差で全然違うから…。僕は1982年製の、Stevie Ray Vaughanが愛用してたやつ。それがもう、ドンズバですからこれ。ま、そんな感じですかね。

Jake:最終兵器、という感じがわかりましたね。あとやっぱりシングルコイル向けのチューニングだなという感じはした。

青木:それはあるね、勿論。

Jake:方向性がはっきりしてて、それでいて贅沢な…素晴らしいと思います。

青木:嬉しいですねえ〜。

Jake:で、宣伝した所で買えないというのが歯がゆい所だけど(笑)。幻のアイテム。

青木:でもコンデンサーとかを現行のものに換えて、どれだけ同じ音が出るかという挑戦はしてみたいと思ってて。

Jake:それで量産出来たら…。

青木:そうだね。本来これは量産目的じゃないから。自分のヴィジョンを形にしたもの。

Jake:それはひとつ完成したわけじゃないですか。だから出来ればこの音を広くプレゼンして、今の技術で再現を…まあエンジニアの腕にかかってるわけですけど(笑)。

青木:そうだね、出来るとは思うよ。

Jake:だからヴィンテージ・パーツで作るのは勿論良いんだけれども、こういう音がもっと手軽に買えるようになれば…と思う次第です。

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