異形の美 – downy 4thアルバム

VOLA & THE ORIENTAL MACHINE, UNKIE, SYRUP16G等で活躍しているギタリスト、青木裕率いるdownyの4thアルバム。

メンバーにVJを有し、ステージでは照明の代わりに映像を用いるというパフォーマンス面で語られる事も多いのだが、
何と言ってもその硬派かつストイックな演奏こそが彼等の醍醐味であろう。
その複雑さはプログレの如く、リズムの一音々々は硬く重く、ギターは激しさと繊細さを併せ持ち、儚い響きの歌が嵐の中を漂う。
その特異なアンサンブルに加え、オーヴァーダブを抑えた事によるライブ感、それを更に強調するささくれだったミックスが反応しあい、
その強大な音塊はまるでクリーチャーが暴れ叫ぶ様を、そしてそこに残された瓦礫の山に訪れる冷たい静けさをも感じさせる。
このアルバムは、尋常ならざるテンションを放出する彼等による、類い稀なる音の結晶である。

現在活動休止中の彼等であるが、当時のライブにおける緊張感は並外れたものであった。
そこでROBERT FRIPPの如くに腰掛けて、異形の美を放つ音を奏でていた青木裕。
彼は僕が敬愛する数少ないギタリストであり、夜更けまで杯を交わせる友人でもある。
彼と初めて会ったのは、とある打ち上げの席での事であった。ちょうどその頃この作品を完成させたばかりの彼は、僕にその音を聴かせてくれようとしたのだが、生憎サンプル盤を持ち合わせていなかった。普通ならばそこで「じゃ、また今度会った時にでも渡すよ」などと言って済ませてしまいそうなものだ。しかし彼は一味違う男である。

その時彼は、自分の携帯するCDプレイヤーのフタをおもむろに開け、その中からこのアルバムを取り出して僕に手渡したのだ。
「ケースとジャケットは今持ってないけど、中身だけあげる」と言いながら。

という理由により、僕の所有するこのアルバムには、未だにジャケットが差し込まれていないままである。

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