2. 転校生

━ カンフーに憧れる少年に訪れた転機 ━

当時、時は正しくカンフー・ブーム。
強くなりたいと思う少年が愛読する「少年ジャンプ」にそのヒントがありました。
唐突に出現する格闘技グッズの広告。その多くは筋トレグッズでありました。

合皮のバンドの中に鉛の板を入れただけの『パワーリスト』
そしてNASA公認のトレーニング・グッズであり
「リングにかけろ」にも登場した『アポロ・エクササイザー』等
まずは基礎体力だと言わんばかりにそれらを購入。
早速自宅にて鍛錬を始めたものの、いかんせん地味で仕方ない。
それに、鍛えるのはいいけれど、それから一体どうすればいいのやら。

そこに颯爽と現れた謎の転校生。

いつもちょっと眠そうな目をした愛嬌のある男子。
私は何故かすぐに彼と仲良くなりました。
そして色々な話をしていた時に彼がボソッと言った言葉。

「僕、 少 林 寺 拳 法 やってたんだ」

!!!!

師匠、しょ・少林寺ですか?! そ・それは一体どこで習って…
「前住んでた所に道場があってね」
もう興味津々・憧れの眼差しです。
しかしこの近所には道場は無い。
もう訓練はしていないのか、と思いきや。

「だから今は 通 信 教 育 でやってるんだよ」

!!!!!!

そ・そんな手があったとは!!
話によると、教材を手本にして主に「形」の練習を積み
昇級試験等の際に道場へ赴くとの事。

もう私は通信教育のテキストを探す事で頭がいっぱいです。
帰宅するやいなやそれを探す私。何を見て探したかって?
勿論・強くなりたいと思う少年が愛読する「少年ジャンプ」ですよ。
よくよく探してみると、あるではないですか拳法の通信教育が!
う~ん、しかも色々と種類があるんだな…。
ここはじっくり練ってから親にねだろうという事にしました。

ところでその転校生はすっかり天然ボケキャラが定着してしまい、
常に眠そうな目と相まってとても強そうには見えませんでした。
ある日回し蹴りを披露しようとしたのですが、
勢い余って床にスッテーン!
「エヘヘ…」と頭を掻きつつ照れながら笑う彼を見て私はこう思ったのです。

「少林寺拳法はやめておこう」

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