Shun Nokina新ブランド「L’ 」始動 | Pro Boostレビュー

  • 2016-11-07 (月)

L' Pro Boost

9/9Redemptionistなどハイクオリティなエフェクターを製作するLeqtique
そのLeqitqueを主宰するShun Nokina氏が新ブランド「L’」を立ち上げました。
2016年11月5日に楽器フェアで行われた招待制の発表イベントでは、参加者にエフェクターをプレゼントするという太っ腹過ぎる企画が敢行されました。
私もそのイベントに参加を申し込んだ一人です。

今回はこのイベントで配布されたエフェクター“Pro Boost”、そして展示されていたモデルについて書きます。


L’ Pro Boost [プロトタイプ] レビュー

L' Pro Boost

L’発表イベントで配布されたエフェクターPro Boostは、ミニサイズの1ノブ・ブースターでした。
まずLeqtiqueやSND (Shun Nokina Design)とは全く違うデザインがインパクトありました。
ハンドメイド感溢れるSwirlペイントではなく、ロゴや文字が彫り込まれた独特の光彩を放つプレート。そしてSND以来のミニサイズ。
これまでと異なる新しい事を始める、というアピールを強く感じます。

そもそもL’を立ち上げる動機として「製作方法を見直し自動化を取り入れる事で供給しやすくする」という旨の発言がNokina氏からありました。(かなり割愛しつつざっくりまとめてます、失礼)
そして製作方法を見直したメリットのひとつとして大幅なサイズダウンが可能になったようです。
なおかつ「クオリティには一切の妥協をしない」と断言されては期待が増すばかりです。

ちなみにSND / Leqtique製品と異なり、今回のペダルには電池は入りません。
こだわりを持っているように思われた電池駆動を切り捨てたというのも、これまでと大きく異なる点でしょう。


L' Pro Boost

それではこのPro Boostをレビューします。
今回は音源や動画は制作していないので文章のみです。

Boost : 12時方向

まずはBoostノブを12時方向で弾いてみました。オンにした途端に、音が前に出てくるような印象を受けました。
ワイドレンジにブーストしつつ、輪郭を際立たせるような効果を感じます。音量はオフ時より若干上がる程度です。
特にクリーン・トーンで感じたのですが、ナチュラルで上質なコンプレッサーに迫るくらいに、1音1音が前面に出てくる感覚があります。
クリーン/歪みのどちらにかけても原音のキャラクターを基に、抜けを良くしてくれる感じです。これはかけっぱなしで使えると思います。

Boost : 12〜5時

Boostを上げていくと音量も上がるのですが、それよりも音圧が上がるのを強く感じます。
歪みペダルの後段に繋いでBoostを12時から最大へと上げていくと、音量は極端に上がっていないのに音がどんどん前に出てくるように感じます。
リード時に踏むブースターとして使いやすいのではないでしょうか。
歪みの前段に繋げばゲインが上がり、エッジ感も増します。

Boost : 9時前後

Boostノブが9時辺りで所謂ユニティゲイン、聴感上でオフ時と同じくらいの音量になります。
クリーン・ブースターとして使う場合には味付けが濃い目のタイプだと思います。
重心が高域寄りにフォーカスされ、トレブル・ブースターに近い効果を感じました。
歪みペダルと組み合わせた場合には音質がタイトになります。

Boost : 9時以下

Boostを9時より下げるとオフ時より音量が下がります。歪みペダルの前段に繋ぐと歪みを落とす事が出来ます。
ギターのボリュームを下げて歪みを落とす方法がポピュラーですが、このやり方だと高域がこもってしまう場合があります。
Pro Boostでレベルを下げていくと、高域の質感や輪郭を保ったまま歪みを減らす事が出来ました。
地味なようで実用的なこの使い方が出来るブースターは意外と少ないのですが、Pro Boostはこの用途にも使えると思います。
ただこの場合の設定幅は7時半〜9時と狭いです。


これまで個性的な歪みペダルをリリースしてきたShun Nokinaが新ブランドお披露目に配布するブースターという事で、どのように個性を出してくるのか興味津々でした。
実際に弾いてみて受けた印象をシンプルに述べると「洗練された使えるブースター」。
Pro Boostの名前通りです。音の際立ちやノイズの低さはLeqtiqueに通じるクオリティですね。
そして使い込んでいく事で作り手の意図が少しずつ見えてきそうな、そんな深みを持っているように感じさせます。
イベントに参加した甲斐がありました。満足度の高いブースターです。


展示モデル「16′ 9/9」について

L' 16' 9/9

楽器フェアではPro Boostとはまた違う別のモデルが展示されました。
4ノブのこのモデルについて詳細は発表されなかったようですが、Shun Nokina氏本人から直々に話をうかがう事が出来ました。
ガラスケースから取り出して現物に触れながらまず教えてくれたのはモデル名。
その名も「16′ 9/9」
その意味は9/9 2016モデル。つまりLeqtique 9/9をL’のフォーマットで作り直したという事ですね。

Leqtique 9/9 – Hi-Gain Distortion

かなり複雑だという9/9の回路をミニサイズに収めてしまった事にまず驚きます。
ここで思い出すのはやはり、知る人ぞ知るShun Nokina Design Surcustom 9/9+
Leqtique 9/9リリース前に限定数販売されたミニサイズの4ノブ・ディストーションです。
私も所有していたのですが、小さいスペースに無理矢理詰め込まれた回路の視覚的インパクトが強烈なペダルでした。
音的にはLeqtique版と共通点を持ちつつも独自の個性がありました。しかし16′ 9/9は当然ながら9/9+とは全く無関係との事です。
Leqtique製品と同じ音を更に安い価格で提供するというのがL’版のコンセプトのようです。

今回16′ 9/9を弾く事は出来なかったのですが、Nokina氏の熱い解説を聞いて、これは凄いペダルだろうと確信しました。
Leqtique 9/9は個人的にお気に入りのエフェクターなので「Leqtiqueと全く同じ音がする」と言われては期待するしかありません。

L' Pro Boost

ところでL’の筐体はお馴染みOne Controlのミニサイズペダルに比べて高さがあり、Xotic EP Boosterに近い寸法です。
筐体についてNokina氏から聞いて印象的だったのは、ジャックの位置を低くしているという事です。
ここからは私見ですが、ミニサイズのペダルはジャックが上寄りに配置されているものが多く、そのデザインだとケーブルを繋いだ際に重心が高くなります。
重心が高くなるとマジックテープでボードに固定していても、一般的なMXRサイズのペダルに比べてぐらつきやすくなります。
逆に重心が低くなればぐらつきが減り、踏んだ時の安定感が増します。
音に関わる部分ではないでしょうが、心理的な安心感というか信頼感に繋がる要素かも知れないと思いました。
電池駆動を切り捨てたのはその辺への考慮もあるのかな、と勝手に感じた次第です。


発表会でのスピーチではLeqtiqueの語源でもある「止揚」という言葉が使われました。
「相反する要素に目を向けて、それを乗り越えることで一つ上の段階に進む」との意味を持つ言葉です。
正にそんな意気込みを感じる発表会と新作でした。
SND、Leqtiqueを経て更に新しい次元へ踏み込む新しいエフェクター・ブランド「L’」
販売開始予定は2016年12月初旬との事です。その際には是非またレビューしたいと思います。今から非常に楽しみです。

Shun Nokina, Jake Cloudchair and Sho Iwata

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